TVドラマ「ゆとりですがなにか」でも描かれているように、すでに「ゆとり世代」も後輩を指導する立場になっています。
そしていまや大卒で入社してくるのは、「さとり世代」と呼ばれる新入社員たち。
「さとり世代」という言葉は、「ゆとり世代」と比べるとあまり馴染みがないかもしれませんが、欲がなく現実を「悟」った現代の若者世代のことをこのように表します。
「勝手に世代でくくってレッテル張ってんじゃねーよ!」というなかれ。
志向や考え方の違いを把握して、それに合わせた指導ができると、より「できる後輩」に育つのが早くなるというもの。
もちろん教育指導係としてのあなたの評価も上がります。
「さとり世代」と言われる今年入社の新入社員の特徴を知り、新人指導を行う上での大前提となる心構え、「さとり世代」新入社員を「ゆとり世代」先輩が指導する時代の新人育成方法を紹介します。
大卒新入社員は「さとり世代」
ズバリ、今年の新卒入社は「さとり世代」と言われる世代です。欲がなく現実を「悟」った現代の若者世代のことをこのように表します。
その世代の範囲は、1987~1996年生まれ(ゆとり世代と同じ)、1994年前後生まれでゆとり世代の後半、ゆとりの次の世代など諸説ありますが、だいたい1994年以降生まれで2016年以降に大卒で入社する彼ら・彼女らは、まさにこの世代なのです。
「さとり世代」は、生まれた時から不況の時代だった為、物心ついた頃から「安定」が求められていた時代です。
その特徴としては、
- 物欲がない
- 自動車に乗りたいとか海外旅行に行きたいとか、ひと昔前の若い世代が憧れていたような欲がない
- 服や食べ物は、良質で安価なものを選ぶ
- 分からない事があればすぐにネットで調べる
- 面倒くさい人間関係は避ける
- 積極的に恋愛もしない
…などが挙げられます。
彼らは“コスパ(=コストパフォーマンス)と安定”を求める世代なのです。
ちなみに、2016年4月新卒入社の人が生まれた1993年は、Jリーグの開幕、レインボーブリッジの開通、新幹線のぞみ等が話題となった年です。音楽では、CHAGE&ASKAの「YAH YAH YAH」が大ヒット。この年に生まれた芸能人では、NHK朝ドラ「あまちゃん」で話題になった能年玲奈さん、福士蒼汰さん等がいます。たしかに、どこか落ち着いた印象のある若者たちかもしれません。
この「さとり世代」青年を主人公にして大ヒット中のマンガが「ニーチェ先生~コンビニに、さとり世代の新人が舞い降りた」です。
これを読んだら、笑いながらさとり世代への対応が学べるはず…たぶん。
というのはさておき、よりよい指導を行う上で大切な事は、まず相手を知ることです!
さとり世代の新人たちのイメージが少しはできてきましたでしょうか。
「さとり世代」の新人指導する先輩は「ゆとり世代」
「さとり世代」について説明をしてきましたが、その指導を主に担うのは「ゆとり世代」と呼ばれてきた世代の社員たちという事実も見逃せません。
「ゆとり世代」は、「マイペース」「仕事後の付き合いを好まない」と言われてきましたが、あなたの会社の「ゆとり世代」はどうでしょうか?
「実際にその通り」という会社もあれば「うちは、ゆとり世代も付き合いがいい」「滅私奉公で必死にがんばっている」という会社もあるでしょう。
実は、その「ゆとり世代」も、もう30歳近くになっている人がいます(「ゆとり世代」は、「ゆとり教育」を受けた1987年~1996年生まれの世代。2016年で、29歳~20歳となる)
彼らは、もはや会社の中堅になりつつあります。すでに部下をもっている立場の人もいることでしょう。あなたが信頼できる会社の先輩も、実は「ゆとり世代」だったという事もあるのです。
このように考えると、あまり「○○世代」というレッテルは、意味をなさないのかもしれません。
実際には、個人が元々持っている性格や資質、その会社・部署の環境、上司・先輩や上司の指導の方がはるかに重要ですから。
しかし、新入社員の指導を行い、彼らの成長のサポートを行っていく過程では、「世代の離れた新入社員の気持ちが理解できない」「新人たちとのコミュニケーションがうまくいかない」という壁にぶつかる事もあるでしょう。
この記事では、彼・彼女たちの気持ちをより理解し、さらに手厚いサポートを行っていく上でのヒントにするという意味で、あえて「さとり世代」「ゆとり世代」という考え方を基に、新人指導の方法のチェックポイントを紹介したいと思います。
「ゆとり世代・さとり世代」の新人育成方法
1.敬語を使う
自分が若いウチは、年下や後輩になめられないようにと、命令口調やタメ口を使ったり、偉そうな態度をとりがちです。
新人との1対1の関係ではまだよいかもしれませんが、あなたの指導を見ている先輩や年上の人たちは、その光景を決してよい気分では見ていないでしょう。
「なにを急に偉そうになってんの」と内心思っているかもしれません。
もちろん指導される側も、あまりいい気分ではありません。
相手が年下の新人でも、あえて敬語を使って指導を行いましょう。
「うちはフラットな社風だから」という理由で、敬語を使わないのは損です。
フラットな社風だからこそ、しっかりとした敬語を使える先輩が尊敬され、新人も心を開き、あなたの言う事を聴いてくれるのです。
2.決めつけない
学生から社会人になった時は、誰でも必ず、その環境の違いに慣れる為の時間が必要です。
伝えたい事を上手く伝えられないという人もたくさんいるでしょう。
ですから、新人のミスやできない原因を、勝手に決めつけて判断してはいけません。
「これだからゆとり世代・さとり世代は」という言葉もNGです。
彼らも聞き飽きている言葉でしょうし、心の中では“面倒くさい先輩だなぁ”と思われている事でしょう。
最初のうちに心を閉ざしてしまうと、その後から信頼関係を築いていくのには時間がかかります。
また、新人が、「実は会社の役員の親族だった」「取引先の重役の2世だった」という事も珍しい話ではありません。
「新入社員だから」と足蹴にして、あなたが恥をかかないように気をつけましょう。
3.質問する
新人と一緒に仕事をしている中で、“なんでこんな事もできないんだ”と思う事があるでしょう。
ミスをしたり、ハッキリしない態度を見て、時には怒鳴りつけたくなる事もあるかも
しれません。
しかし、そこはグッとこらえましょう。新人を責めても何も始まりません。なにせ新人なのですから。
そんな時は、質問をするように心がけましょう。しかも、質問の仕方も重要です。
「なんでこんな事もできないの?」というのは、質問になっていません。「すみません」と言わせているようなものです。
「何が原因だと思いますか?」
「その理由はなんですか?」
「次回はどうすればできると思いますか?」
「その為に、何を改善したらよいと思いますか?」
・・・というように、相手に考えさせたり、気づきを与えられる質問が「よい質問」です。
4.傾聴する
傾聴とは、ただ「聞く」のではなく、相手の話に興味や関心を持ち積極的に「聴く」スキルの事です。
傾聴により、話を聴いてもらえた相手は“自分の事を理解してもらえた”という気持ちになるので、相手との信頼関係を築きやすくなるのです。
新人に自分の指導を聴き入れてもらうには、まず、新人の話を聴いてあげましょう。
新人の話を聴く時は、“何いってるんだ?”と思う事もあるかもしれませんが、話の途中で遮ったり、否定をしたりしてはいけません。
「うん、うん」と相槌を打ってあげたり、相手の目を見て話を聴いてあげる事で、“真剣に聴いていますよ”という気持ちを伝えましょう。
5.考えさせる
はじめからすべて答えを出してあげるのではなく、時には、自分自身で考えさせる機会を作りましょう。
もちろんゼロから考える事はできませんから、ところどころヒントを与えてあげて、ゴールへ導いてあげましょう。自分で考える力をつけてあげるのです。
考えさせる為には、先輩が「傾聴」や「質問」を繰り返し行い、新人が独力で答えを導く為のサポートをしてあげましょう。
「誰でもできる仕事」だからと言って、ただやり方だけを教えているだけでも悪くはないのですが、自分で考えるクセがつけば、成長のスピードが早くなります。
新人の成長は、自分自身の成長と考え、根気強くサポートしてあげましょう。
6.比較しない
「ゆとり世代」「さとり世代」は、よく「比べられる事を嫌う世代」だと言われています。
また、周囲の目をよく気にするのもこの世代の特徴です。「人と同じ」がいいのです。
“運動会で全員が一緒に手を繋いでゴールをする”という嘘かホントか疑うような話が話題にもなった世代です。
「同期のあの人はできるのに、なぜ○○さんはできないの?」なんて言うのは絶対NG。
また、上司あるあるですが「俺の頃はこんなに大変だった。今の若い奴は…」というアピールも、誰にもメリットがありませんので発言には注意しましょう。
7.ほめる
日本人は照れ屋な気質がある為、相手を褒めたり、逆に褒められたりする事が苦手と言われています。
本当にそうでしょうか? 誰でも、ほめられたら嬉しいですよね?
新人のやったことが上手くいった時には、どんどん褒めてあげましょう。
また「ほめる」という指導法は、逆に注意したり、ミスを指摘したりしなければいけない場面にも有効です。
人間誰でも、怒られたり、ミスを指摘されているばかりでは、面白くありません。やる気もなくなってしまいます。
「こういう部分はすごくよかったよ。あとは、この部分が課題だね。」
・・・というように、最初に褒める事で、その言葉がクッションとなり、指摘しにくい事もスムーズに行う事ができます。
指導を受ける側も、全てを否定されたわけではないという安心感があるので、モチベーションを下げずに、課題や指摘事項を受け容れる事ができるのです。
こんな時も、「褒める」は使えるのです。
8.叱る
新人が怠けていたり、社会人として間違った事をすれば、時には叱る事も必要です。
しかし、叱る事はとてもリスクが高い行為です。
ここで知っておいて欲しいのが、「怒る」と「叱る」は違うということ。
「怒る」は、自分の感情に自分が支配されて、相手のことを見ることができていません。
「叱る」は、自分ではなく相手のために相手の悪かった点を注意することです。
先輩としての威厳を見せる為に“怒鳴ったり”するという行為は絶対に避け、厳しく指導を行う場合は1対1の場で行いましょう。
「ゆとり世代」が社会人になり始めた時期、その特徴として、「怒られる事に慣れておらず、ストレス耐性がない」とよく言われていました。
「さとり世代」も「ゆとり世代」とほぼ同義、もしくはその延長という定義づけなので、そのような特徴があると言われています。
また、最近では、学生のアルバイトにも「ブラックバイト」という言葉があるように、彼らは、自分たちの労働環境に対してとても敏感です。
真剣に指導した(つもりだった)自分が、逆に会社の悪者扱いされないように注意しましょう。
9.お手本を見せる
新人指導は、「指導をする」という事が目的ではありません。
指導をして「できるようにしてあげる」という事が本当のゴールです。「指導する」だけなら、正直、誰でもできます。
それなのに、できない後輩の愚痴ばかり言っている同僚があなたの周りにはいませんか?
後輩ができるようになるために、まずは自分が手本を見せることが大切です。自分ができないのに後輩を指導できませんよね。
連合艦隊司令長官の山本五十六の名言に、『やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ』という言葉あります。
まずは自分自身が(やってみせ)お手本を見せ、丁寧に指導を行い、できたら褒めてあげなければ、部下は動かないよ、という意味です。
仮にこれから社会人になる2年目の方でも、後輩を率いる立場の人間になるので、その責任はとても大きいものです。
新人が結果を出せない場合、その原因や責任は、他の誰でもなく担当しているあなたにあると考えましょう。
後輩ができるようなるために、一緒に考え、悩み、突破口を見つける。そんな先輩が尊敬され、もっと教わりたいとも思われるのです。
いまどき新人指導のリスクとは!?
新人の指導が一人前にできれば、上司からの評価が上がり、グループのリーダーとして抜擢されるかもしれません。
指導した新人や後輩には、自分の仕事をお願いしたり、飲み会の幹事を任せる事が出来るかもしれません。
しかし、逆に、指導が一人前にできなかったり、先輩としての評判が悪かったりすれば、デメリットもあります。
当然、会社からは、「できない先輩」と思われ評価が下がります。
さらに、新卒同期のLINEグループやSNSで、
「この先輩は仕事ができない」
「あの先輩間違ってる事を教えてた」
「あの先輩に聞くのは辞めよう」
「あの男の先輩、同期の○○ちゃんをご飯に誘ってた」
……そんな話が自分の知らないところでネットに拡散されているという事も…。
(若い後輩たちとは、よい人間関係築いていきたいものですね。)
「さとり世代」新入社員を「ゆとり世代」先輩が指導する時代の新人育成
今回は、「さとり世代」「ゆとり世代」を部下・後輩に持つ方に向けて、新人指導の考え方とそのチェックポイントを紹介しました。
「指導する」という行為1つとっても、現在は、とても丁寧にかつ慎重に行う必要があるのです。
ゆとり世代が、しっかりと仕事の姿勢やビジネスマンとしての基本、心構えを身につけさせ、教えられるのだろうか、と上の世代の人からは、少し不安に思われているかもしれません。
そうでなくても、いつの時代も新人教育というのは、難しいものです。
しかし、「新人類」と呼ばれた時代の新入社員たちもいまや立派な中年の管理職になっていることを思うと、こういう世代だからどうこういうのも変な話かもしれません。
とはいえ、「最近の若いもんは!」じゃないですが、より若い人はその上の世代とは、いろんな点で、志向や考え方に違いがあるようです。
それに合わせた指導ができると、できる新人に育つスピードも上がります。
新入社員研修を終えた新人は、すぐにあなたの部署には配属されないかもしれません。
でも、この記事で紹介した指導ポイントは、新入社員以外の後輩や部下にも使う事ができるので、練習がてら、ぜひすぐにでも試してみてください。
後輩社員の指導に悩んだら、
→「後輩指導で悩んだら読むべし。先輩社員に求められる8つの教育指導力」
後輩や部下の育成で自信がついたら自分のキャリアアップも、
→「年収1000万円超えの転職を目標にしている人のための転職サイト!」
あなたが、新人指導を一人前に行えるようになり、尊敬される先輩・上司として社内での評価がますます上がりますように!