自分にはどんな仕事が向いているんだろう?と思ったとき、大手転職サイトの「適職診断」っておもしろそうですよね。
なんといっても無料ですし。
たった数分で自分に向いている仕事が分かる!ということで魅力的に見えますが、実は簡単だからこその落とし穴もあります。
適職診断を受ける前に気をつけたい3つのこと。適職診断の受け止め方について解説し、筆者おすすめの適職診断も紹介します。
1.大手転職サイトの適職診断の結果は?
いまやネットで検索すれば、無料で簡単にできる適職診断が数多くみつかります。
その多くは就職・転職サイトが提供しているものですが、なかには中学・高校生むけに進学先を選ぶための診断(アクセス進学 https://naninaru.net/tekishoku/check/)や、IT企業が無料で公開している診断(VCAP http://vcap.vone.co.jp/)もあります。
今回は、大手転職サイト3社、リクナビNEXT、マイナビ転職、DODAの適職診断の特徴を、筆者が実際に体験してまとめました。
1)リクナビNEXT「3分間 適職診断」
- URL:https://next.rikunabi.com/01/tenshokushindan/tenshokushindan_01.html
診断内容:「仕事選びの価値観テスト」・「自分発見!性格テスト」
質問数:22問
所要時間:約3分
一言解説:求人キーワード検索の参考キーワードをみつけるための超クイック診断
質問には「必ずそうしたい」「できるだけそうしたい」「どちらかといえばそうしたい」「こだわらない」、または(a)と(b)のどちらに近いかを、4段階から選んで答えます。
質問の数は少なく、数分で終わります。
診断結果の最後には、求人探しのキーワード検索へのリンクが示してあります。
つまり、あくまでこれは求人を絞り込むうえでのヒントがみつかればOK、というスタンスの診断だということです。
性格テストの方は「小学校低学年の頃のあなたは~」と聞かれますが、どれだけの人がはっきりとその頃の自分を思い出して正しく答えられるでしょうか。精度についてはそれほど期待できないかもしれません。
リクナビNEXT「グッドポイント診断」
しかし、リクナビNEXTには、これよりもはるかに詳しい診断が用意されています。
それが会員向けに無料で提供している「グッドポイント診断」というツールです。
30分間で約300問という膨大な数の性格や価値観に関する質問に答えることで、18種類の中から5つの強みを発見することができます。
無料で利用できる診断としては最も質問数が多く、所要時間がかかりますが信頼性は高いといえます。
ただし、あくまで利用者の「強み」の発見がねらいになっていて、それがどのような職種に向いているのかについての解説はありません。
「自分の強み」についてよく知りたいという方には、有益な情報になることと思います。
また、この診断結果を企業への応募に添付すると採用に有利に働くという話もありますので、自己PRをどうしようか悩んでいる人は試してみてはいかがでしょうか。
2)マイナビ転職 適性診断(マイナビ会員のみ)
- URL:https://tenshoku.mynavi.jp/aptitude/index.cfm
診断内容:「パーソナリティ」・「バリュー」・「総合判断」・「マッチした求人情報」
質問数:32問、26問
所要時間:約5分、約10分
一言解説:簡易診断にしては情報が充実 でも求人情報とのマッチングが不明
パーソナリティ診断では、タイプAとタイプBどちらに近いかを10段階で答える形式です。
バリュー診断では、4つの選択肢から「価値を置く」「価値を置かない」のどちらかに近い方を選びます。
似たような価値観の項目を何度も表示して回答の同一性を担保し、診断としてはしっかり設計されています。
しかし、疑問に感じたのはここからです。
「総合結果」では2つの診断の結果を合わせた総合判断<アクションプラン>として、なぜか「苦手とする能力・改善策」が出てきます。
性格や価値観の話をしていたのに、なぜ急に能力の話になるのか不明です。
また、診断結果に合う求人情報として、筆者の場合は14件の絞り込まれた求人が表示されました。
その途中経過が不明なのですが、運営が転職サービスなので、やはり求人に誘導したいんだなという印象を受けました。
※マイナビの20代専門エージェントサービス
>>>マイナビジョブ20’s
3)DODA ICQキャリアタイプ診断(要会員登録)
- URL:https://doda.jp/dcfront/personality/personalityIndex/
診断内容:「性格・気質傾向」・「能力傾向」・「行動基準」・「向いている仕事スタイル」・「向いている企業風土」
質問数:120問
所要時間:約20分
一言解説:無料診断としては重め。エージェントとの面談準備資料として利用できそう。
それぞれの質問に対して「はい」「どちらかといえばはい」「どちらともいえない」「どちらかといえばいいえ」「いいえ」の5つの選択肢から回答します。
画面は見やすいですが120問もあるので、最後の方はだんだん疲れてきて適当に答えている自分がいるのに気づくかもしれません。こういった診断は考えすぎずに回答した方がいいのでその点では理にかなっているともいえますね。
結果も簡単すぎず詳細すぎず、ちょうど読みやすいかと思われます。
また、性格や向いている仕事だけでなく、企業風土に目を向けているところも特徴です。
ですが、「結局、適職は何?」という疑問に答えてもらうためには、DODAのエージェントと面談してみないと分からないというところが残念です。
DODAの転職エージェントサービス
>>>転職のプロが薦める優良企業が豊富なのはDODA
いずれにしろ実際に転職をするにはエージェントのお世話になった方がスムーズなのですが、もう少しどんな仕事が向いているかについての結果を出して欲しいですね。
2.大手転職サイトが適職診断を提供する理由
さて、ここまでいくつかの適職診断を見てきました。
では、これを受けた結果、自分に向いている仕事が分かった!と素直に納得できるでしょうか?
できませんよね。……というのが筆者の個人的な感想です。
実はこれらの適職診断では、自分の性格や価値観が、実際の仕事に結びついているかどうかがわかりづらいのです。
結局、自分なりに考えたり、キャリアアドバイザーに教えてもらったりしないと、自分の適職についてなかなか理解が深まらないということになります。
それではなぜ大手転職サイトは、このような中途半端な診断を「適職診断」として無料で提供しているのでしょうか?
それには以下のような、いくつかの意図があると考えられます。
1)無料のコンテンツを用意して会員登録をうながす
食品なら試食、化粧品なら試供品など、一度使ってみないと自分に合うかどうか分からないようなる商品やサービスの場合、無料であれば気兼ねなく試すことができますよね。
転職サイトにおける適職診断が無料で使える理由のひとつはこれです。
今回試した3社では、適職診断(リクナビNEXTの場合はグッドポイント診断の方ですが)を受ける際には会員登録が必要でした。
サイト側はこれによって、潜在求職者の情報をマーケティングすることができるわけです。
2)自社の求人情報やエージェントサービスの得意分野に誘導する
大手転職サイト3社とも、診断の結果を求人情報に直接つなげたり、エージェントとの相談サービスにつなげたりしながら、利用者を自然な形で自社サービスに誘導しようという流れになっていました。
マイナビは診断結果と求人情報の整合性が気になりましたが、流れとしては何がしたいのか理解できます。
また、これらを通して、各社が何を自社の強みと捉えているかも分かります。
- リクナビNEXTは適性診断ではなく「強み」診断を使っていることから、利用者が各自しっかり自己PRすることができれば転職を成功させられるだけの案件数がある
マイナビの場合は、ネット検索で求人情報を自在に選べる完結型。
DODAの場合は、エージェントの対面相談。
ということを物語っています。
3)診断を通じて、利用者の性格や行動傾向を把握する
転職サイトにとって、利用者個人の情報は求人会社とマッチングするために何よりも重要です。
利用者がいくら「やりたい仕事」で求人を探しても、実際には求人先から見てその利用者が活躍できる人材でないとマッチングは成功しません。
そのため転職のマッチングを成功させるためには利用者の性格や行動傾向といった「向いている仕事」に関する情報の収集が必要です。
しかし基本的な会員情報の入力のみだと、個人的な状況について把握するには限界があります。
そこで、このような適職診断のツールを用意することで、利用者側から見て「向いている仕事」「適職」を見せるかわりに、貴重なその「人となり」についての情報を入手しようとしているのです。
大手転職サイトが提供する適職診断ではここに主眼が置かれており、利用者の性格・価値観と実際の職種とのマッチング部分があまり注意がはらわれていないのでしょう。
3.適職診断を受けるときの3つの注意点
このように大手転職サイトの適職診断には不完全な部分もあります。
そこで、あなたがこうした適職診断を受けるときに、気をつけておいてほしいことを3つお伝えします。
1)質問法による分析。診断なのに客観的ではない?!
実は、診断結果は「自分自身の自己イメージ」からつくられたものです。
「あなたはどういう人ですか?」「あなたはどういう行動をしがちな人ですか?」「あなたはどういう価値観を重視しますか?」という質問に答えているとき、それはいまのあなたがあなた自身を見たときに思っている印象から答えを導いています。
当たり前のことのように思えるかもしれません。
しかし、たとえば病院での健康診断と比較してみるとどうでしょうか。
体温や血圧を測り、X線写真を撮り、検尿や血液検査を行って、客観的な数値データの分析を行います。
もちろん医師による問診もありますが、「あなたは何かの病気ですか?」と問われることはないでしょう。
これらの分析の結果、客観的な診断結果が出るのが健康診断です。
一方、適職診断はあくまで質問を通じて「自分は自分をどう思っているか」、が表れているものだということです。その結果はとても主観的なものなのです。
2)回答の仕方によっては適切な結果が出ないことがある
次の注意点はよく知っておいてください。
自分にあまり自信が持てないとき、気分が沈んでいるとき、体調が良くないときは適職診断自体をやめておきましょう。
はっきり回答できず「どちらともいえない」ばかりを選択すると、計算上、ほんの少しの違いだけをとらえて「○○タイプ」と断定されてしまったり、「判定不能」という結果になったりします。
多少、誇張するくらいはっきりと回答した方が、分かりやすい結果になります。
3)質問とタイプの分類は作り手側の意図が強い
これは診断の作り手側の目線に立った注意点です。
実は簡易な適職診断の場合、診断における質問と回答の関係は、裏で作り手のロジックによって様々な性格や適職のタイプに結びつけられています。
たとえば、「あなたは人前で話すのが得意である」といった質問があった場合、YESであればコミュニケーションが上手で営業タイプ向き、NOであればバックヤード向きというように分類しているわけですが、では逆に人前で話すのが苦手な営業は向いていないといえるでしょうか?
実にステレオタイプ的な分類がされているわけです。
4.診断結果の受け止め方で大きな違いが!
さまざまな注意点がある適職診断ですが、このような診断を受けたとき、ただ結果を鵜呑みにしたり自分にとって耳あたりの良いところだけ納得したり、せっかくの診断結果をうまく利用できていない人が多いのではないでしょうか。
実は、こうした診断を受けるときには、その「受け止め方」について次のようなスタンスをもつことで、その結果を前向きに捉えるようになるのです。
1)「当たる」診断だけでなく「意外」な結果も大切にしよう
適職診断なのだから、「当たっているか」が重要なのでは?と思う人もいるでしょう。
もちろん、このような診断に初めて取り組んだ方は、「当たっている!」「おもしろい!」と何かと心理ゲームや占いを見るような気持ちになることも無理はないと思います。
自分の自己イメージを言葉で表現することは難しいことですから、それを代わりに表現し、説明してくれるこのような診断はとても便利な代物です。
ですが実は、「これ、本当に自分の結果なの?」「こんな結果は意外」と思うポイントの方が大切です。
次の「ジョハリの窓」という考え方でお伝えします。
2)ジョハリの窓の「盲点」が重要!
ジョハリの窓とは、図のような4つの箱で表現する自分自身についての理解度を表すものです。
出典:ウィキペディア|ジョハリの窓 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%8F%E3%83%AA%E3%81%AE%E7%AA%93
この中で、右上 Ⅱの「盲点の窓」というところに注目してください。
これは、「自分は気がついていないものの、他人からは見られている自己」というように、適職診断はこの「他人」の役目を果たすものになります。
つまり、適所診断の結果、「性格」「価値観」として出た結果の中には、あなた自身が自覚している自分の結果もあれば、まだ自覚してはいないだけで実際はそうだった、というものも含まれています。
ですが、自覚していないだけに、「これは私のことではない」「ハズレてる!」と思ってしまいがちです。
せっかく適職診断を受けたからには、こうした「違和感のある結果」にも目を向けて、日ごろの仕事や生活の中でそのような一面がなかったか、振り返ってみましょう。
そうすることで、自分の知らない一面がみえてきて、思わぬところに自分の「適職」がみつかるといったこともあります。
3)診断結果と適職の関係は……
ここまで紹介した3つの適職診断では、性格や価値観のタイプはわかるのですが、それと実際の職業のタイプとの紐付けはあまりしっかりとされていませんでした。
質問によって性格や価値観を分析する診断と、性格や価値観が実際の職業に対してどのように向いているかを分析する診断の間にしっかりとしたロジックが不十分な印象を受けます。
ですので、、性格や価値観の診断をした後、結局は求人票を検索し、転職エージェントと面談するしかないことになってしまいます。
もちろん転職活動を行う上でそれが近道ではあるのですが、自分で向いている仕事をまず知ってから自分でその仕事についての情報を探したいという人もいるかと思います。
そこで、次のような、「自分の性格や価値観と職業の紐付け」が分析されている、市販の適職診断ツールにトライしてみることをおすすめします。
5.筆者おすすめ、適職診断に最適なツール3選
どれも1,500円~2,000円くらいの値段がしますが、自己投資だと考えて思いきって試してみてはいかがでしょうか。
1.さあ、才能(じぶん)に目覚めよう 新版 ストレングス・ファインダー2.0
トム・ラス (著)、 古屋博子 (翻訳)
「とくに強く意識しなくてもうまくやってのけてしまう自分にとって当たり前のように見える強み」を才能と定義し、それが活かせる職種を実際のインタビュー事例とともに紹介する1冊です。
世界中で翻訳され活用されている名著。
強みの表現が独特ですが、意外にしっくりきてしまうのが特徴です。
向いている仕事が分かるだけでなく、なぜそれに向いているのかが解説されているのできっと納得できることでしょう。
2.「あなたの天職がわかる16の性格」
ポール・D・ティーガー (著)、バーバラ・バロン (著)、 栗木 さつき (翻訳)
性格類型を4×4で16類型に分類するというシンプルな方法ですが、職種との紐付けについてよく分析されているため、向いている仕事を考えるときに大変役に立ちます。
同じ考え方の診断を無料で体験できるWEBサイトもあるので試してみてください。
http://www.seikakushindan.info/
3.データでズバリわかる! ディグラム天職診断
木原 誠太郎 (著)、 ディグラム・ラボ (著)
たった20問の簡単な質問に答えるだけなのにもかかわらず、しっかりした分析を提供してくれる新しい診断です。
ベースはTA(交流分析)というあまりに有名な心理学の手法を用いていますが、37万人分、数万項目を超えるアンケート調査の豊富なデータがその信頼性や納得性に裏づけを与えています。
マイナビ天職サイトから無料で体験することもできます(ジョブリシャス診断)
http://tenshoku.mynavi.jp/opt/joblicious/)。
適職診断は受け止め方のスタンスで変わる!
ジョハリの窓のところでも書いたとおり、適職診断は、自分が知っている自分についてよりうまく説明してくれたり、あなたが自分では自覚していない自分の特徴に気づかせてくれたりするものです。
診断結果を、当たってる・ハズレてると自分で判断するか、また、その結果をポジティブにとらえるか、ネガティブにとらえるか、受け止め方で次のステップが違ったものになります。
その辺を注意した上で、ぜひ「適職」とのつながりがわかる適切なツールをつかって可能性の窓をひろげましょう。
あなたが正しく適職診断を活用して、転職先の可能性を拡げ、また、いま現在の職場での活躍の可能性を拡げることができるよう心から祈っています。
もう少し広い範囲で自己分析したい人は、
→「自分の適職を見つけるには?|おすすめ自己分析6つの診断」
適職診断を生かして、あなたの転職が成功しますように。