50歳で早期退職した場合、その後の生活が成り立つかどうか気になる人も多いのではないでしょうか。
55歳定年だった時代のことを考えれば、早期退職して新しい仕事を始めたり完全リタイアして早めに余生を楽しんだりすることを検討してもおかしくありません。
しかし現在は、給与所得や退職金が減少傾向をたどる中で十分な年金を見込めない状況にあるため、50歳で早期退職したら老後に生活が破綻するリスクも大いにあると考えられます。
ここでは50歳で早期退職する場合に確認すべきことと覚悟しておくべきリスク要因を解説します。
50歳で早期退職した後にどんなリスクがあるか?
基本的には早期退職する場合のリスクはすべてお金に関係した事柄です。
早期退職後にどんな金銭的な問題が発生する可能性があるのか、ひとつづつ見ていきます。
1.再就職後の失業
50歳で早期退職してベンチャー企業などへ転職すれば、会社が倒産するリスクは高まります。
また、転職先では即戦力として期待されるため、実績を評価されなければ1、2年で辞めざるを得なくなる可能性があります。
50代半ばでの再就職はより厳しい状況になることが予想されます。
2.起業して倒産
起業して事業を始めれば当然ですが倒産するリスクがあります。
起業したこと自体に高揚感を覚えて、無駄な設備投資をする人も少なからず見受けられます。
こうした愚かな行動は慎みましょう。
3.資産運用ミス
資産運用を勧めるサイトには、「年利5%で運用するとして...」といったことがサラッと書かれています。
これを鵜呑みにするとトンデモナイことになります。
超低金利時代の現在、5%の運用益を安定的に確保することは至難の業です。
円預金や日本国債の運用では5%の運用益は得られませんので、相応のリスクを覚悟する必要があります。
もっと悪いことに、完全に詐欺の商品もあります。
くれぐれも儲け話には気をつけましょう。
4.年金・公的扶助カット
年金基金や国・地方自治体の財政状況は悪化する一途です。
このため今の年金などの給付水準を長期的に維持できる可能性は極めて低いと考えるべきです。
5.病気・ケガ
年齢を重ねれば病気・ケガのリスクは高まります。
50歳を過ぎれば、医療費が飛躍的に増加する可能性を考えておくべきです。
6.親族の介護・扶養
自分が歳を取るということは親や兄弟などの親族も高齢化するということです。
それだけ介護や扶養のための負担が増えることを覚悟しましょう。
7.子供の養育期間の長期化
経済成長が低迷する中で世の中はいろいろな意味で複雑化しています。
昔のように高校、大学を卒業すれば誰でも就職するのが当たり前という時代ではありません。
有名大学を卒業した子供がニートになるリスクも決して低くありません。
いま現在と将来の経済事情を確認する!
次に、実際のいま現在のお金の状況を確認します。
どれだけ資産があって、毎月どれだけのお金が入ってくるのか。そしてどれだけ出ていくのか?
ひと手間かかて、数字を出していきましょう。EXCELをつかって収支と資産の見通しをグラフ化すすのがおすすめです。
資産・負債状況
(1)金融資産①(元本確保型)
- 預金
- 国債
- 公社債投信
など、元本確保を前提とする金融商品は、資産を残すという点で一番手堅い運用商品です。
運用先の金融機関が倒産したり国が財政危機に陥ったりしない限り、元本が目減りする心配はほとんどありません。
(2)金融資産②(元本変動型)
- 株式
- 外貨預金
- FX
- 株式投信
など、元本変動が前提となる金融資産は今後大幅に価値が低下するリスクがあります。
こうした資産は将来の生活費の原資として多くを見込めません。
(3)居住用不動産
一戸建ての場合、建物には資産価値がないと割り切りましょう。
その代り手入れを怠らなければ、固定資産税を除き無コストで長く住めます。
マンションは物件特性により資産価値が異なります。
郊外型のマンションは新築時から値下がりする一方だと覚悟すべきです。
(4)事業用不動産
アパート、マンションなどの賃貸経営を行っている人は、その資産性を把握することも重要です。
黒字経営を維持できていれば保有物件の資産価値を高く維持できるだけでなく、生活費の確保にも役立ちます。
(5)その他資産
- 自動車などの大型機械
- ビットコインなどの仮想通貨
- 古美術品
- ヴィンテージもののジーンズや雑貨
などは一定の金額で売却できます。
まとまった量の資産を持っている人は、市場価値や鑑定価格を把握しておくとよいでしょう。
(6)負債(住宅ローンなど)
住宅ローンを始めとする負債額の把握も大切です。
子どもが借りている奨学金も家計全体に影響を及ぼしますので、きちんと確認することが重要です。
収入見通し
(1)給料
一般的な大企業の場合、55歳までの給料は微増または現状維持となります。
そうした事情を前提に、早期退職者に対する割増退職金制度を導入している企業も少なくありません。
ほとんどの人は50歳で転職すれば給与水準が下がります。
その減少分を割増退職金でどの程度補えるかを計算することが大切です。
(2)パート・アルバイト収入
早期退職後に再就職せずのんびり生活したいと考えている人もいるでしょう。
しかし、大半の人は多少の収入を得ないと生活を維持できないはずです。
無理のない範囲のパートやアルバイトで稼げる収入額を把握することも重要です。
(3)事業収入
50歳で早期退職した後に起業したり店舗経営を始めたりする人もいます。
その場合、当然ながら綿密な資金計画を練る必要があります。
また撤退基準を決めて最大損失額を固定しないと、50歳を過ぎて路頭に迷うことになりかねません。
(4)資産運用益
金融資産、不動産などの資産運用益の予測も欠かせません。
長期的にみれば財政破綻によりハイパーインフレが起きない限り(そうなれば日本経済は大混乱に陥ります)、高金利時代が到来する可能性はほとんどありません。
預金などの元本確保型商品の利息や配当収入は極めて少ないことを前提として見通しを立てるべきです。
(5)公的扶助
自身の障害や親族の介護などが理由で早期退職した人の場合、公的扶助の動向に気を配ることも重要です。
これらは自治体による差がありますので、自らが必要とする公的扶助の手厚い地域への転居も念頭に置きましょう。
(6)年金
公的年金には以下の2つの懸念があり、いずれも現実化する可能性が高いと考えられます。
- 支給開始年齢の70歳への引き上げ
- 給付額の削減
とくにサラリーマンの場合、厚生年金による上積み部分が大幅にカットされるリスクがあります。
(7)家族の収入
配偶者や子供の収入を把握することも重要です。
とくに成人した子供の収入が少なければ、収支計画に大きなダメージを与えることになるため注意が必要です。
支出見通し
(1)基礎生活費
まず、足元の基礎生活費を確認しましょう。
- 食費
- 水道光熱費
- 通信費
などはライフスタイルを変えなければ、長期的にみて大きく変動する可能性は低いと考えられます。
ただし少しの工夫で1割、2割のカットは容易に行えます。
例えば携帯電話の料金プランを変更するだけで毎月数千円の費用削減になります。
こうした節約余地を把握することも大切です。
(2)住居費
賃貸住宅に住んでいる場合、生活費の中でもっとも大きな割合を占めるのが住居費です。
公営住宅などへの転居により、住居費を削減できる余地を確認しましょう。
一戸建てに住んでいれば大規模修繕を要する事態にならない限り、固定資産税以外の負担はほとんどありません。
分譲マンションは管理費と修繕積立金の推移を確認しなければなりません。
年数を経るに従い修繕積立金が増加する物件が多いので注意を要します。
(3)医療費
年齢を重ねれば確実に医療費負担は増加します。
実際にどれくらいの負担が発生するのかを予測することは困難ですが、医療費の増加を念頭に置いて収支計画を策定することが大切です。
(4)教育費
昔と比べ今は私立の小中学校と大学院の進学率が上昇しています。
つまり一人の子供の養育費・教育費負担が大幅に増加しています。
昔は文系で大学院へ進学する人は限られていましたが、今は就職と並ぶ一つの進路として認識されています。
教育費負担がいつまで続くかを見極める(決断する)ことが重要です。
(5)介護・扶養費
親族の介護や扶養負担も見定めがたいですが、ほとんどの人には扶養対象となる親族がいるはずです。
いつかは介護しなければならないという覚悟を持って経済的なゆとりを保つことも忘れてはいけません。
(6)税金・社会保険料
税金・社会保険制度も変わるため長期的な動向には不透明な面があります。
消費税率も15%、20%と引き上げられるかもしれません。
また、年金は受給した年の所得として課税対象になることにも注意が必要です。
(7)交際費・娯楽費
早期退職した人は友人との交際や趣味・娯楽を積極的に楽しみたいと考えているでしょうが、お金の使い過ぎには注意を要します。
退職金を無計画に散財すると後で後悔することになります。
退職金はご褒美ではなく給料の一括払いであると認識しなければなりません。
50歳で早期退職した場合のリスクを減らすには
50歳で早期退職して第2の人生を楽しむというのは一つの理想です。
それを実現できれば、どんなにか素晴らしいことでしょう。
しかし、現実はそれほど甘くありません。
その後の20年、30年の人生を考えず夢に飛びつけば後悔する可能性が高まります。
50歳で人生を踏み外さないためには、夢と現実を冷静に分析することが重要です。
ファイナンシャル・プランナーなどに相談するのもおすすめです。
その際、銀行や証券会社などの窓口で資産運用の相談をすると、結局はよくわからない金融商品の購入を勧められます。
相談料が主な収入源になっている独立したファイナンシャル・プランナーに安全第一のプランを立ててもらうのがいいでしょう。
早期退職にあたっては、自分で家計の収支をしっかり計算し、無理のない範囲で夢を実現することが大切です。
突然、会社を辞めざるえなくなったら、
→「50歳からの転職を成功させる秘訣!もし50代で転職を余儀なくされたら…」
はじめて転職する人が気をつけておきたいことは、
→「40代~50代で初めて転職する人向け転職活動の注意事項!」

あなたが幸せな早期退職を実現できますように。