退職届で「一身上の都合」と書くべきではない場合がある! | はたらくす

退職届で「一身上の都合」と書くべきではない場合がある!

退職理由 一身上の都合 退職手続き

サラリーマンが自主的に会社を辞めるときには、必ず退職届(退職願)を提出します。

その際、退職理由を「一身上の都合」とすることが一般的です。

実際には各人に固有の退職理由があるものの、あえてそれを明示しないことが正しいビジネスマナーとされています。

しかし中には「一身上の都合」という曖昧な表現ではなく、具体的な理由を明記した退職届を出すことが望ましいケースもあります。

たとえば、「悔しい!絶対に自分のせいで辞めることにはしたくない!」…といった場合。

気持ちはよくわかります。

そこで、「一身上の都合」といういかにも日本的であいまいな表現を使って仕事を辞めると、後々になって都合が悪くなるケース、リスクとメリットを解説します。


そもそも「一身上の都合」ではない、会社都合退職

一般的な退職届の場合は

    「私儀 このたび、一身上の都合により、勝手ながら、○○年○月○日をもって退職いたします。」

といった書き方をします。

これは意味通りの「自己都合」による退職という扱いです。
 

もし、会社都合の退職にする場合の退職届を提出する場合は、

    このたび、業績不振にともなう○○事業所閉鎖のため、○○年○月○日をもって退職いたします。

といった書き方になります。

会社の倒産や、大量リストラ、勤務していた営業所や店舗、工場などが閉鎖されることにともなう希望退職の募集に応じるような場合は、会社都合の退職です。

また、いじめやパワハラ、あるいは過度な残業などによるなどによる退職の場合も、労働者が自ら退職を申し出たとしても会社都合です。

    このたび、パワーハラスメントによる心身不調のため、○○年○月○日をもって退職いたします。

しかし、会社側はこうした事実を認めたがりません。

一方、労働者の立場からすると、自己都合会社都合では失業保険がいつからもらえるかという条件に違いがあります。

ほかにも以下の例のようなデメリットがあるので、これらに当てはまる場合に、「一身上の都合」にするかどうかを検討するということになります。

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「一身上の都合」で会社を辞めるデメリット(リスク)

一身上の都合 リスク

1.失業保険がすぐに受けられない

退職後の再就職先が決まっていない人は失業給付を受けられます。

ただし自己都合で辞めた場合は、離職票の提出日から7日プラス3か月経つまで受給できません。

つまり、失業保険が約3ヶ月後までもらえないということです。

会社の解雇権の濫用を防ぐ観点から、整理解雇(会社都合による指名解雇)の実施には厳しい条件が付されています。

このため、経営が悪化した企業が自己都合退職を影で強要することが多々あります。

転職先が決まっていない、すぐに決まりそうにないが収入が途絶えるのは非常にマズイという場合は、退職要求に応じず会社が倒産することを待った方がよい可能性もあります。

会社が倒産してしまえば、直ぐに失業給付を受けられます。

ただし、倒産直前の段階で給与の不払いが起きている場合は、難しい判断ですが、証拠を確保して次の2.で述べる場合と同様な手順で退職するという方法が考えられます。

2.リストラを証明しにくい

実質的には指名解雇であっても「一身上の都合」と記載した退職届を提出してしまえば、リストラされたことを証明しにくくなります。

実質的な退職勧奨があったことを退職届に明記しておけば、会社が作成した離職票の離職理由に自己都合退職である旨が記載されていることに対し異議を述べる根拠となります。

3.不当解雇を訴えにくい

会社の経営状態に拘わらず不当に退職を強要された場合、退職届にそれを示す何らかの記載があれば不当解雇の根拠資料として使えます。

「上司の説得を受けてやむを得ず退職を決意した」とか「自分の主張を一切聞いてもらえず遺憾ながら退職することにした」などとホンネをストレートに書いた退職届は人事部が受理しない可能性が高いですが、

    「上司の説諭を深く受け止め退職を決意した」

などマイナス要因を曖昧にした内容であれば人事部が折れる可能性があります。

4.パワハラ・セクハラを訴えにくい

パワハラやセクハラの事実を認めない(あるいは調査すらしない)会社が、「一身上の都合」による退職届をパワハラなどの否定材料にする可能性があります。

会社と対決する腹を固めていれば、退職届にはパワハラ・セクハラの事実を明記すべきです。

そうすれば会社も、離職票に自己都合退職と記載できないはずです。

ただし訴訟まで持ち込んでも負ける可能性があるため、悔しくても表沙汰にしない方が得策な場合もあります。

5.損害賠償請求をしにくい

「一身上の都合」と書いた退職届を提出すれば、不当解雇、パワハラ・セクハラだけでなく給料の未払い、不当な経費負担、不当な配置転換などに関する損害賠償請求もしにくくなります。

会社とケンカをして辞める覚悟があるならば、やはり具体的な理由を明記した退職届を出す方がよいでしょう。

6.内部告発をしにくくなる

「一身上の都合」で退職してしまえば、会社や特定個人の不正行為に対する内部告発をしにくくなります。

円満退社した人の告発は軽く受け止められやすい(単なる不平不満と捉えられやすい)上に、継続的な情報入手による告発が困難になります。

7.転籍出向の証拠を残せなくなる

あまり多くはありませんが、官公庁など出向先の都合で所属企業を退職して転籍出向することがあります。

その場合、出向先では有期雇用となり期限後に出向元で再雇用されます。

しかし、これは暗黙の了解として行われています。

このため再雇用されないリスクを少しでも減らすために出向時の退職届に「一身上の都合」ではなく、「社命による出向のため転籍する」旨を明記することも考えられます。

8.再就職あっせんの証拠を残せなくなる

会社のあっせん(肩たたき)で再就職したものの、転職時の説明と実際の勤務条件が著しく異なるケースもあります。

その場合、退職届に「一身上の都合」と記載されていると元の勤務先の責任を追及しにくくなります。

    「会社のあっせんにより再就職するため」

と退職届に明記する方が再雇用や損害賠償などを求めやすくなります。

「一身上の都合」で会社を辞めるメリット

一身上の都合 メリット

1.会社と敵対せずに済む

退職届に「一身上の都合」と書いて会社を辞める最大のメリットは、 円満退社になることです。

退職者が敢えて曖昧な退職理由を示し会社がそれを受理することにより、双方が傷を負わずに済むということです。

これにより表面的には友好的な関係を維持できます。

2.ホンネを言わずに済む

「一身上の都合」という退職理由が認められなければ、具体的なことを表明せざるを得なくなります。

  • 「給料が安い」「仕事がキツイ」「上司の態度が横柄」といった会社への不満
  • 「親の介護が必要」「障害を持つ子供の養育に専念」など他人には知られたくない個人的な事情

明らかにすることが避けられなくなります。

3.退職手続きをスムーズに進めやすい

会社と敵対し円満退社できないと退職手続きがスムーズに進まなくなる恐れがあります。

会社が離職票の作成、社会保険料の変更手続きなどを意図的に遅らせれば、転職に支障が生じかねません。

4.有給休暇を消化しやすい

円満退社でなければ、有給休暇も十分に消化できなくなる恐れがあります。

そうなればリフレッシュの機会を失うだけでなく、転居、住民票の異動、子供の転校手続きなどが滞りかねません。

5.社宅から慌てて退去せずに済む

社宅に住んでいる人の場合、円満退社すれば会社が退職後も一定期間は社宅に住み続けることを容認する可能性が高いと思われます。

しかし、会社に敵対すれば退職日までの退去を強く求められる恐れがあります。

6.不祥事を隠せる

就業規則上の懲戒処分事由に該当するとは言いがたいものの世間的には不祥事と判断される不倫、子供の非行、近隣住民との重大トラブルなどを理由に会社を辞める場合でも、会社が「一身上の都合」を受け入れてくれれば穏便に退職できます。

7.懲戒解雇を避けられる

少額の横領、パワハラ・セクハラ、職務上の重大なミスなど懲戒処分の根拠となる理由で退職するときも、会社の恩情により自主退職を促されることがあります。

その場合、表面的には「一身上の都合」となるため、横領などの事実が表に出ることはありません。

8.退職金や賞与を受給しやすくなる

退職金や賞与は就業規則などに基づき支給されるものであり、会社がそれを拒むことはできません。

しかし円満退職でない場合は、いろいろと理屈をつけて支給を遅らせる可能性があります。

9.転職時に不利な扱いを受けずに済む

「一身上の都合」で辞めれば懲戒処分を受ける心配はありませんが、他の理由を強硬に主張すれば訓告・けん責などの処分を下される恐れが生じます。

再就職時には懲戒処分を記載した履歴書を提出するため、それが不利な材料になる可能性があります。

10.会社の再就職支援サービスを利用できる

何らかの再就職支援サービスを行っている企業もありますが、円満退職でなければそれを利用できなくなる恐れがあります。


自己都合と会社都合は「円満退職」に収めるかどうかでの判断も

退職届に「一身上の都合」と記載する意味は、円満退職を黙示することです。

裏を返せば、会社に対し何らかの責任を追及したりその可能性を担保したりするときは、退職理由を明示することが望ましいと言えます。

(念のため責任追及の痕跡を残したい場合は、他の方法で目的を果たすことも考えられます)

大切なのは「一身上の都合」で退職することの適否を考え、何らかのリスクがある場合は対策を講じることです。

円満退職しない(できない可能性がある)人は、退職届の書き方などをよく考えて対応しましょう。

弁護士も100%正しいわけではありませんが、争って勝てそうかどうかが、ひとつの目安にはなります。

 

やはりここは形だけでも円満退職ということにしておくか…と思ったら、
上手く会社を辞める方法~円満退職してアレコレ言われない3つのコツ

あなたが納得した上で退職できますように。