正社員、派遣社員、契約社員と雇用形態は何であれ働いているときに妊娠したら、お金はいくらかかる? 仕事は辞めるか続けるか? 休みは取れる? と考えるでしょう。
女性の場合は「仕事を休む」、もしくは「退職」することを1番に考え、その後はお金の不安が残るのではないでしょうか。
男性の場合は「家族を養えるのか」、「今の給料・出産にかかる費用はどれくらいなのか」など、立場と責任感からお金のことを1番に考えるかもしれませんね。
妊娠=退職=出費 と考えるのではなく、家族が増えて新たな人生が始まるというポジティブシンキングに切り替え、貴重な経験を上手に活用する方法を紹介します。
1.産休と育休の制度と無給のときの収入源
産休については「派遣社員が妊娠しても産休・育休を使って仕事を続ける方法」という記事の中で、『1-1.産前産後休業(産休)とは?』で詳しく説明しました。
育休については「派遣社員が妊娠しても産休・育休を使って仕事を続ける方法」という記事の中で、『1-2.育児休業(育休)とは?』で詳しく説明しました。
産休は女性しか取得できない休みですが、育休は男性も夫婦一緒に取ることができる権利です。
ここでは産休と育休の特徴を表を使ってかんたんに説明いたします。
名前 |
出産育児一時金 |
出産手当金 |
内容 |
健康保険法に基づき出産にかかる費用として国からもらえます |
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支給金額 |
1人につき42万円です |
例: |
申請先 |
会社または加入している健康保険 |
会社または加入している健康保険 |
条件 |
妊娠期間が85日以上継続していること |
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支給時期 |
直接支払制度を利用できます。(健康保険から病院へ出産費用を直接払ってくれる制度) |
申請してから1~2カ月後 |
この表でわかるように、出産育児一時金は必要書類に記入するだけで、病院への支払いを国がしてくれます。
出産一時金は出産費用をまかなうことができるため、手元のお金が少なくても安心です。
一方出産手当金は出産後、手元に入金されるまで少し時間がかかりますのでご注意ください。
2-1.出産育児一時金の手続きと流れ
出産育児一時金を申請する場合、夫がいる場合には、夫と妻、両方の保険のどちらかを使用することができます。
ただし保険の種類によっては使用できない特別な制約があるかもしれません。
どの健康保険に申請すればよいか事前に確認しましょう。
(子どもが生まれたとき | 健康保険ガイド | 全国健康保険協会)
申請する保険会社がきまったら、出産育児一時金の支払い方法を次の3つのから決定します。
- 直接支払制度:産院が本人に代わって健康保険組合に出産育児一時金の申請を行い、健康保険から直接支払われる制度
- 産後申請制度:自分で全て支払った後に健康保険組合に申請し、支給額を振り込んでもらう制度
- 受取代理制度:直接支払制度を導入できない小さな産院で利用する制度(事前申請が必要です)
直接支払制度の流れ
- 産院で「直接支払制度」の合意書をもらいます。夫の扶養に入っている場合は、夫の署名が必要になります
- その後は産院と健康保険組合の間で支払い請求が発生します
- 退院時出産費用42万円を超えた場合、差額金は自分で支払います
- 逆に少ない場合は差額分を健康保険から受け取ります
産後申請制度の流れ
- 事前に健康保険組合から「出産育児一時金支給申請書」をもらいます
- 出産後、産院で「出生証明書」の欄に記入してもらいます
- 「出産育児一時金支給申請書」を健康保険組合へ提出します
- 提出後、2週間後に指定口座に42万円が振り込まれます
受取代理制度の流れ
- 「受取代理申請書」を健康保険組合へ提出します
- 出産後、産院が健康保険組合へ「出産費用請求報告書」などの書類を提出します
- 健康保険組合から産院で支払われます
2-2.出産手当金の手続きと流れ
出産手当金に関しては、加入している健康保険でもらえるか事前に確認しておきましょう。
もらえることが確認できたら次の手順で進めます。
- 産休前に派遣元から「健康保険出産手当金支給申請書」をもらい、入院までに産院へ提出します
- 産院で「出産の証明欄」の記入をしてもらいましょう
- 産休終了後、「健康保険出産手当金支給申請書」を加入している健康保険に提出します
- 手続きをしてから1~2カ月後には指定の口座に出産手当金が振り込まれます
2-3.重要!「出産手当金」のこと、今知った!という方でも間に合うかも?!
過去2年以内であればいつでも申請できるので、この記事を読んだ後、請求していないとわかった方はぜひ手続きをおこなってください!
3.出産が終わったあと、育児中にもらえるお金について
出産後すぐに育児が始まるため、そう簡単には会社に復帰できません。その間無職の状態がしばらく続きます。
この期間中の収入を保証してくれる制度を「育児休業給付金」といいます。
育児に専念するため会社を退職したり、休業したりしている間の育児休業期間中に支給される「育児休業給付金」は、厚生労働省・ハローワークより支給されます。
「育児休業給付金」をもらうための手続き方法、入金までの流れを次で説明いたします。
3-1.女性だけではなく、男性ももらえる育児休業給付金!
働いているパパ・ママは赤ちゃんが2歳になるまでの間、育児休業を取得できますが、その間にハローワークから支給される給付金について説明します。
※平成29年9月までは1歳まででしたが、支給期間が延長されました。
3-2.支給金額はどれくらい?
休み開始時の日給(会社から支払われていた給料の日額) × 支給日数の67%を計算します。
つまり、休んでから最初の180日分は平均月給の67%をハローワークから支払われます。180日過ぎた後は平均月給の50%が支給されます。
例えば毎月交通費込みで20万円の給料をもらっている場合、12月に出産予定で1月27日~11月30日まで「育児休業」を取得したとします。
すると、¥101,156円(月)/¥1,213,878(12か月)が支給されます。
※会社から休業手当が別に支払われる場合、会社の給料と給付金の合計額が今までの8割を超えないように調整されます
※賃金月額が447,300円以上もらっている人は、この金額が上限となっているため、月額447,300円で計算されます。
※逆に賃金月額が74,100円を下回る場合、74,100円が給付額になります。(この額は毎年変更されます)
※便利なサイト「産前産後休業・育児休業給付金|期間・金額計算ツール」をご覧ください
3-3.育児休業給付金の手続きと流れ
育児休業給付金は、派遣社員の場合は雇用期間によって支給されない場合があるようです。
支給される条件に、派遣社員の勤続期間の条件がありますので、「派遣社員が妊娠しても産休・育休を使って仕事を続ける方法」という記事の中で、『1-2.育児休業(育休)とは?』で詳しく説明していますのでご覧ください。
正社員も給付条件がありますが、派遣社員よりは複雑ではありません。
赤ちゃんの育児期間を楽しめるように育児休業をどうとるか、両親2人で話し合ってくださいね。
手続き方法
- ハローワークで、育児休業給付受給資格確認票、育児休業基本給付金支給申請書をもらってきます
- 育休1カ月前までに派遣元に提出します
- ハローワークの手続き完了後、2カ月ごとに給付されます
最後に
産休や育休についてネットで調べたとき、メリットやデメリット、休みを取れるかなど否定的な意見がたくさんあります。
生活するのに必要なお金、収入がなくなる可能性があるので確かに心配です。
でも、
- 派遣社員でも産休は取れます
- 出産費用は約42万円もらえる公的補助制度があります
- 出産のための入院費で月額81,000円以上かかった場合は高額療養費として戻ってきます
- 出産後も給与の2/3の出産手当金が勤務先健康保険から約3か月分でます
とうぜん出産、育児を100%おぎなうことができませんが、みな公的制度を利用して子どもを育ててきています。
ここでのお話しは必ずみんなの役に立つ社会保障の知識なので、ぜひ今後の参考にしてください。
あなたが幸せな出産、育児ができますように。