かつてハローワークが職安(公共職業安定所)と呼ばれていた頃には、仕事を失った中高年労働者が藁にもすがる思いで最後に駆け込む場所だと思われていました。
とくに簡易宿泊所が密集する地域の職安は、ガラが悪く敬遠する人も少なくありませんでした。
そうした偏ったイメージを払拭するために、1990年4月から職安を「ハローワーク」という愛称で呼ぶようになりました。
ハローワークになってから窓口の雰囲気も徐々に明るくなり、求職者にとっても通いやすい場所に変わりました。
しかし募集されている求人は給料が安い案件が多く、ブラック企業の求人票が紛れ込んでいるといったウワサもあります。
いまのハローワーク求人の特徴や活用方法を紹介します。
ハローワークの求人の特徴
1. 件数が多い
ハローワークインターネットサービスの求人情報検索ページには、常時100万件レベルの求人が掲載されています。
2018年1月25日時点では、1,327,067件ありました。
(https://www.hellowork.go.jp/servicef/130020.do?action=initDisp&screenId=130020)
2. 職種が多い
ハローワークでは、さまざまな職種の求人を扱っています。
各案件は厚生労働省編職業分類に基づき、細かく職種を分別して表示しています。
とくに製造業では、「工場内作業(機械オペレータ・加工技術者)」など細かく職種を規定しています。
雇用形態については、正社員のほか契約社員、アルバイト、パート、派遣、請負の案件も扱っています。
これらも明示されているため、正社員に絞って仕事を探すことも可能です。
3. 現場の仕事が多い
職種の特徴として、現場関連の求人が多いことが挙げられます。
地域密着の会社が募集をかけるなら、まず手軽にハローワークを利用します。
そのため、現場関連ブルーカラーの仕事が多く掲載されています。
4. ホワイトカラーの仕事は少なめ
大手企業やホワイト企業は有能な人材にお金をかけてでも採用したいため、有料求職サイトや有料職業紹介会社を使うことが多く、必然的にハローワークにホワイトカラーの求人は集まりにくいと言えます。
ただブルーカラーに比べて求人数が少ないだけで、オフィスワークの仕事が決してないわけではありません。
地方だと地域色の濃いハローワークで、ホワイトカラー求人を見つけることも難しくないでしょう。
5. 地方の仕事も多い
ハローワークは全国にあります。
税務署、警察署、消防署などの官公庁が設置されている地域であれば、おおむねハローワークもあります。
民間の人材紹介会社がカバーしきれない、地域の求人も取り扱っています。
またインターネットでは全国の求人案件を閲覧できるため、東京で生活している人がUターンを考えて地元の求人案件を探すといった活用方法も考えられます。
6. 高齢者向けの仕事も多い
ハローワークは民間の人材紹介会社と異なり、特定の業種、職種などに特化して運営されている訳ではありません。
このため幅広い年齢層、職歴、学歴の人に対応しており、高齢者向けの案件も取り扱っています。
7. 職業訓練と併せて活用できる
ハローワークでは、厚生労働大臣の認定を受けた民間訓練機関による職業訓練など能力開発の機会を提供しています。
厚生労働省は職業訓練と就職支援をセットで進める方針を打ち出しているため、職業訓練課程を終えれば一段と親身に就職支援を行ってもらえることを期待できます。
ハローワークの求人の問題点
1. 求人企業の審査が甘い
ハローワークは、厚生労働省の出先機関です。
行政の一環として就職支援を行う立場にあるため、求職者のみならず求人企業も平等に扱うことが求められます。
求人企業から手数料を徴収することもないため、反社会性や重大な労働法令違反などの問題がない限り求人票の取り扱いを拒むことは難しくなります。
2. 古い案件が放置されている
民間の人材紹介会社では豊富な案件を取り扱っているようにみせるため、求人活動を終えた企業の案件をいつまでもウェブサイトに掲示しているケースがあります。
ハローワークでも求人票が数カ月間、放置されていることもあります。
マナーの悪い会社が求人を中止したり他のルートで採用したりしても、その会社からの採用連絡がない限り掲載されたままの状態になることがあります。
ハローワークは求人の有効期限を原則として受理日の翌々月末までとしているため、最長で3か月(例:4月1日受理、6月30日失効)求人状態が維持されます。
また同じ案件を3か月ごとに更新(手続き上は再登録)することもできるため、漫然と求人票を出し続ける例もあります。
3. 虚偽の求人条件のチェックが甘い
民間の人材紹介会社は求人企業、求職者とも質の高い集団を作らなければマッチング率が高まらないため、求人企業や雇用条件の内容も丁寧に確認します。
それに対しハローワークは「来るものは拒まず」というスタンスで大量の求人を受けつけるため、どうしても条件チェックが甘くなります。
4. 給料の安い求人が多い
企業は高い人件費を払ってでも、欲しい人材の採用にはコストを惜しみません。
一方で採用にあまりお金をかけられない場合は、有料のサイトなどに掲載できないため、無料で利用できるハローワークに求人票を出します。
また、募集企業側が誰でもできると判断した職種の場合、できるだけお金をかけずに採用したいと考えます。
このようなことから無料で利用できるハローワークには、どうしても給料の安い案件が多くなる傾向がみられます。
5. 大企業案件が少ない
より優秀な人材を求める大企業は、多少のお金がかかっても民間の人材紹介会社を利用します。
なぜなら大量の求人を取り扱うハローワークでは、優秀な人材を効率的、効果的に採用することが難しいと判断するからです。
ただし、大企業でも地方工場などは、ハローワークを積極的に活用する場合があります。
6. ハローワークに成約ノルマがない
一般的に人材紹介会社は、求人企業が人材を採用した後に成功報酬を受け取ります。
つまりマッチィングが成立しなければ、いくら企業へ求職者を紹介しても1円の売上にもなりません。
このため必死になって優良企業と優秀人材の開拓に努めます。
それに対し、ハローワークには明示的なノルマがありません。
求職者へ求人情報を提供し続けるだけで組織を維持できます。
7. 職員の能力・態度のバラツキが大きい
ハローワークは役所なので、成果が上がらなくてもつぶれることはありません。
一方で、国の財政悪化に歯止めをかけるために経費削減が求められています。
その結果、職員の能力・態度のバラツキが大きくなってしまいがちです。
正規職員で労働行政の専門家としてのキャリアパスを描ける人は一生懸命働く一方、有期雇用の非正規職員にはやる気が感じられないといったことがあります(全員に当てはまることではありませんが)。
ハローワークの求人の活用方法
1. 求人動向のチェック
ハローワークには多数の求人が寄せられます。
このため多くの求人票を斜め読みすれば、大まかな求人動向を把握できます。
求人件数の推移をみるだけでも、景気動向(人手不足感)を推測できます。
2. 最低条件のチェック
地域、職種など条件が共通する案件をまとめてみれば、給与や休日などの最低ラインのイメージをつかむことができます。
それを踏まえて、民間の人材紹介会社の案件をチェックする手もあります。
3. ブラック企業の見極め
一定期間多くの求人票を眺めていれば、よく目にする案件が浮かび上がってきます。
こうした企業は業績好調で採用が追いつかないというより、ブラック企業で採用者がすぐに辞めてしまう場合が多々あります。
このような企業はハローワークの職員の目にもとまるので、気になる場合は会社の実態について質問するとよいでしょう。
4. 面接の練習
ハローワークには数多くの求人が集まる為、面接の練習台として利用する手もあります。
ただ、中には優良企業での求人も多数紛れています。
事前にどのような会社か下調べを行ってから、練習台にするのか考え利用しましょう。
ハローワークでは管理している求職者数が多いため、一人一人の把握が行き届いていない場合が多々あります。
あまりにも態度が悪かったり極端に悪い印象を持たれてしまうと、その後の案件紹介に支障をきたします。
5. 優良案件への真剣な応募
ハローワークにも多数の優良企業求人があります。
とくに人材紹介会社が手薄な地方では、ホワイト企業もハローワークを多数活用しています。
都市部の真っ当な中小企業がハローワークを頼るケースも少なくありません。
こうした企業の中には、給与水準は低くても社長の人柄や職場の雰囲気がよい会社もあります。
ハローワークには多数の求人が寄せられるため、真剣に探せば是非とも応募したいと思える案件が見つかる可能性は十分にあります。
無料で簡単、全国どこにでもある特徴を活用しよう!
ハローワークにも、民間の人材紹介会社と同様に取り扱う求人案件の特徴があります。
企業は、ハローワークの「無料」「全国どこにでもある」という特徴に着眼して求人票を出します。
このため、好待遇や管理職を求めるハイクラス人材向けの案件はあまり見当たりません。
それ以外のブルーカラーやオフィスワーク、営業職、アルバイト、パート等を対象とする案件が中心になります。
また、相対的に大都市よりも地方での存在感が大きく利用価値が高くなります。
ハローワークの求人を探す際には、こうした特徴を理解して上手に活用しましょう。
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ハローワークの求人をうまく利用して、あなたの転職が成功しますように。