ヘッドハンティングが新卒採用や一般の中途採用と決定的に違う点は、「応募しない」ことです。
通常は、企業が職種や待遇を定めた上で、求人を出します。
そこへ仕事を探している人が応募することにより、採用活動が本格化します。
一方、ヘッドハンティングでは応募もしていない企業(あるいはヘッドハンター)から声がかかります。
こちらから応募したわけではないため、通常の就職・転職活動と比べ、より対等な立場で個人と企業と接触することになります。
そこでは給与交渉は当たり前のように行われています。
しかし、こうした交渉に不慣れであれば、得られるはずのものを逃してしまうかもしれません。
ヘッドハンティングを受けた際の給与や待遇などの条件交渉で、気をつけておきたいポイントを紹介します。
[ INDEX ] この記事の目次
ヘッドハンティングでの給与交渉は誰が行うのか?
ヘッドハンティングでは企業から直接声がかかることもありますが、特定のコネクションによるケースを除けばヘッドハンター(エージェント)が介在します。
その場合、初期段階の交渉はすべてヘッドハンターを介して行われます。
ヘッドハンターはクライアント企業が望む条件に適した人材の転職(引き抜き)のために活動しており、給与交渉にはドライに対応します。
あなたが「もう少し年収を高く設定して欲しい」と希望を言っても、クライアント(企業側)が給与水準の引き上げに応じる意思がなければ、「この給与水準で納得できなければ、ご縁がなかったとお考えください。」という態度をはっきり示します。
一方で、能力・経緯・実績等からみて他の有力な候補者が限られる場合は、クライアントに給与アップの必要性を熱心に説いてくれます。
要するにヘッドハンターは、クライアントと候補者の力関係を考えて、強い方の意向に沿って動くということです。
したがって給与交渉への対応状況をみれば、自分に対する評価がある程度分かるはずです。
なお、「なぜ自分に声がかかったのか」、「クライアント企業が望むことは何か」といった基本的なことも、ヘッドハンターに確認しましょう。
前者については、当人の情報をヘッドハンターが現職や取引先などの関係者から収集した結果、適任と判断したとの説明になりますが、その辺りを少し掘り下げて聞くとある程度の事情を理解できるはずです。
企業タイプ別、ヘッドハンティングの給与交渉
1. 日系大手企業
日系大手企業には、新卒で入社した社員を前提とする給与(報酬)制度があります。
勤続年数、年齢、職務、実績などに基づき給与を決定します。
中途入社の場合、ベース報酬は同年齢(同年次)、同職務の現職社員と同じになることが一般的です。
このため、実績評価に相当する部分以外には給与交渉の余地は殆どないでしょう。
交渉ではなく質問するという対応が賢明です。
2. 外資系企業
多くの外資系企業では給与交渉を行うことが当然の前提となっています。
固定報酬(月給等)のほか、インセンティブとなる変動報酬(ボーナス、ストックオプションなど)についてもきちんと交渉します。
「成果を出せば報いる」という抽象的な合意で済ませることはありません。
外資系企業は労働の対価として支払う報酬について具体的な取り決めがなければ訴訟リスクを抱えると認識するため、会社も報酬額や支給基準を明確にする必要があると考えています。
3.オーナー企業
オーナー企業の場合は良くも悪くもオーナーの一存で報酬が決まります。
部下に指図されたり意見具申されたりすることを嫌がるオーナーが多いため、一般的には給与額の交渉余地はないと考えられます。
「この給料で嫌ならウチに来るな!」といケースが多いのではないでしょうか。
ただし、高度な技術などを見込まれ三顧の礼をもって迎え入られる場合は別です。
この場合は、オーナーと対等な立場で給与を交渉できます。
4.ベンチャー企業
一般的にベンチャー企業はお金がありません。
大企業から転職すれば固定報酬(月給等)は大幅に減少するはずです。
このため、「安い給料は我慢するが、成果報酬を多くしてほしい。」という交渉になります。
具体的には、ボーナスのほか株式・ストックオプションの割当を要求します。
しかし、この辺りの交渉にシビアな企業であれば、採用候補者のことを経営の中枢を担う「仲間」としては迎え入れる気がないと考えられます。
外様として安い給料でこき使われるリスクがあるということです。
ヘッドハンティングの給与交渉までに行うべきこと
1. 現職の待遇の整理
まず現職の待遇を整理しましょう。
現在支給されている給与、手当、賞与だけでなく、もらえる可能性のある住宅手当、管理職手当、ストックオプション、退職金などをすべて洗い出すことが大切です。
また社宅、住宅ローン補助、人間ドックなど福利厚生のチェックも欠かせません。
さらに退職せずに勤め続けた場合の昇給(出世)を織り込んで、「将来にわたってもらえる可能性のある給料」を試算することも重要です。
2.現職の業務内容の整理
現在の業務内容を具体的に整理することも大事です。
営業であれば、取扱商品・サービスの概要、クライアントの特徴・社数(人数)、営業スタイル(ルートセールス、飛び込み営業、店頭販売など)。
営業戦略、部下の管理・育成方法など相手の企業にとって必要な人材であると認識してもらえるような情報を整理することが重要です。
3.過去の実績の整理
「伝説の営業マン」のような盛った話はNGですが、客観的、具体的に過去の実績を説明できるように準備することは欠かせません。
具体性のある話をすれば相手の面接担当者には通じます。
経理、総務、法務、人事など管理部門の人でも日常の仕事内容や業務改善に関する取り組みや見解を述べれば、どの程度の力量の人物か分かってもらえるはずです。
4.給与以外の条件の把握
オファーポジションの職務内容、達成責任、職務権限、予算・人員体制の把握も不可欠です。
高い給与には相応の仕事と責任・権限がついてきます。
給与増の代わりに職務権限や予算・人事権の強化を求める手もあります。
こうした交渉を行う可能性も考慮して、ヘッドハンターを通じ具体的な内容を確認することが重要です。
ヘッドハンティングの給与交渉で欠かせないこと
1. 自らの実績・能力のアピール
一番大事なことは自らの実績・能力をアピールすることです。
ただし過剰な演出は禁物です。
具体的、客観的な情報を提供し、理解してもらうことが大切です。
シンプルに「プロなら分かる」ことを伝えると効果的です。
何も言わないのも問題ですが、オレは優秀だというアピールが過ぎるとかえって能力や人格を疑われます。
2. 達成責任の交渉
とくに外資系企業の場合は具体的な達成責任を確認することが重要です。
営業部門であれば売上高、営業利益などの予算が設定されているはずですが、それに対する達成責任と給与や賞与等との関係を明らかにして、過大な責任を負わされないように交渉することは不可欠です。
非営業部門でも可能な限り達成責任の内容を具体化して、リスク回避を図ることが大切です。
3. 職務権限、予算・人員の交渉
達成責任が重ければ、それに応えるために必要な職務権限や費用予算・人員を確保しなければなりません。
また人員については数だけでなく質も重要になるため、人事権も要求する必要があります。
4. その他の勤務条件の交渉
職務によっては、勤務形態(勤務時間の裁量性)の交渉も大切です。
裁量労働制やフレックスタイム制に適した仕事もありますので、定時勤務が前提となっている場合は交渉すべきです。
また人によっては育児・介護のための支援(休暇取得、託児所利用など)も交渉事項になるでしょう。
5. 固定報酬(月給、住宅)の交渉
給与額の交渉はまず固定報酬から始めます。
一番大切なのは月給ですが、衣食住のうち住については月給と別枠で交渉することもあります。
とくに外資系企業の場合は、「月給+福利厚生費+社宅」で月次コスト算定するケースが多いため、社宅や住宅手当などの確認・交渉を忘れてはいけません。
6. 変動報酬(賞与、ストックオプション)の交渉
営業など売上・利益に直結する部門では、固定報酬を押さえ変動報酬を厚くする企業も少なくありません。
こうした企業では賞与支給やストックオプション割当の基準について交渉することになります。
なおストックオプションは退職すると権利行使できないこともありますので、行使条件をきちんと確認することが重要です。
7. 退職金の交渉
一般的に日系企業では退職給与規程(役員の場合は退職慰労金規程)に従い自動的に退職金支給額が算定されます。
一方、外資系企業の上級ポストの場合は退職金も交渉事項に含まれることが多いようです。
固定報酬を抑えて変動報酬と退職金の割合を高めることは企業にとってリスク回避を図る上で望ましい戦略となるため、そうした点を理解した上で交渉することが大切です。
対等な立場での取引であることを肝に銘じる
本来、企業と労働者は対等な立場にあります。
企業は労働者から提供される労働サービスの対価として給与などを支給します。
価格(給与)決定の基本的な原理は、モノの売買と同じです。
値段によって、買うこともあれば買わないこともあります。
しかし実際には企業の求人に労働者が応募するかたちで労働契約が成立するケースが大半であり、給与交渉の余地はほとんどないことが一般的です。
そうした中で、ヘッドハンティングの場合は例外的に企業と対等な立場で給与などの労働条件を交渉できます。
尊大で傲慢な態度は問題ですが、自分の価値を客観的に分析して冷静に交渉することは、当然の権利だと考えてよいのではないでしょうか。
日本で活動を行っている主なヘッドハンティング会社については、
ヘッドハンティングされるような人であれば、年収1000万円以上の求人が5,000件以上用意されている会員制の転職サービスで、自分の交渉条件が妥当かどうかをチェックしてみるのもひとつの方法です。
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ヘッドハンティングで声がかかった条件よりもいい条件で、やりがいのある仕事のオファーがくる可能性があります。
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→「年収1000万円以上の報酬でやりがいのあるポジションが得られる転職サイト」
普通の会社員をしていてヘッドハンティングのチャンスが回ってくることは、そうそうありません。
これまでの仕事の実績が高く評価された証です。
ヘッドハンティングされて転職するにしろ、いまの会社に残るにしろ、まずは別の可能性を調べてみるにしろ、あなたがいい条件で仕事ができますように。