サラリーマンやOLから転身できる自営業には、どのようなものがあるのでしょうか?
また、どんな職種の人の所得が高いのでしょうか?
すでに自営業者として起業、独立開業している人は、自分がはたして稼げてる方なのかも気になりますよね。
国税庁の統計から、申告所得が高い職種、女性向けで年収の高い自営業、夫婦で行う自営業、そして意外と儲かる業種を紹介します。
年収の多い自営業者の業種は?
国税庁の統計に「申告所得税」というものがあります。これは、申告所得税納税者の所得分布などを、地域や職種で集計したものです。
申告所得税納税者とは、自分で事業を営んでいる、不動産所得がある、給料と事業所得両方がある(副業をやっている人など)、雑所得(利子、配当、退職金など)がある個人や法人のことです。
ここで平成26年分の事業所得者の合計金額を人員で割ると、平均は約399万円。ということは400万円以上稼いでいれば、自営業者として平均以上に儲けているということになります。
平成27年度に申告したのは450万人あまりで、そのうち、年間400万円以上の申告所得のある人(法人含む)は、約77万人となっていて、申告者数の17%にあたります。
なお、申告所得イコール収入ではありません。
申告所得は控除分などを差し引いた金額ですので、実際の収入よりも低くなっています。
また、申告者数には兼業や副業の人も含まれています。特に副業をやっているような人の割合が多い職種では、平均すると低い金額になります。
そうした点を差し引くとしても、ある程度はどの職種が稼げるかの傾向を見ることができます。
それでは主な職種別に平均所得額と、年間400万円以上稼ぐ人の割合を見てみましょう。
自営業者|平均所得が高い業種ベスト10
事業所得 | 所得申告者総数 | 平均所得(万円) | 400万円以上の所得者数 | 所得400万円以上の割合 | |
1 | 病院、診療所 | 40,862 | 2,396 | 37,721 | 92.3% |
2 | 弁護士 | 30,354 | 968 | 20,019 | 66.0% |
3 | 歯科医 | 51,281 | 950 | 39,859 | 77.7% |
4 | 税理士、 公認会計士 | 46,207 | 662 | 32,570 | 70.5% |
5 | 職業選手、競技関係者、職業棋士 | 17,320 | 607 | 7,095 | 41.0% |
6 | 獣医 | 6,008 | 490 | 2,941 | 49.0% |
7 | その他の法務専門サービス | 15,950 | 434 | 6,722 | 42.1% |
8 | 水運業 | 995 | 379 | 350 | 35.2% |
9 | 司法書士、行政書士 | 24,345 | 357 | 9,047 | 37.2% |
10 | 鉱業 | 176 | 324 | 50 | 28.4% |
病院や診療所の所得が断然高くなっています。また申告した人の92%が400万円以上の所得があります。
歯科医、弁護士、税理士、会計士、獣医など高度な専門資格を持っていると、安定した収入が得られることがわかります。
7位の「その他の法務専門サービス」とは、産業分類(日本標準産業分類と経済センサス産業分類を参照。以下同様)を見ると、弁理士(特許)、公証人役場、土地家屋調査士、社会保険労務士などが該当します。
8位の「水運業」や10位の「鉱業」は事業者も少なく、あまり一般的ではない特殊な業種のせいか、平均所得が高くなっているようです。
なお表にはありませんが、「漁業、水産養殖業」が320万円で11位に入っています。海の男はハードな職業ですが、案外収入は高いようです。
次に、400万円以上を稼いでいる人数が多い業種を見てみましょう。
400万円以上の所得者が多い自営業の業種ベスト10
事業所得 | 所得申告者総数 | 平均所得(万円) | 400万円以上の所得者数 | 所得400万円以上の割合 | |
1 | 農業 | 629,597 | 139 | 129,020 | 20.5% |
2 | その他の事業 | 590,510 | 169 | 93,246 | 15.8% |
3 | 職別工事業 | 436,589 | 238 | 68,827 | 15.8% |
4 | その他の対事業サービス業 | 329,602 | 179 | 54,534 | 16.5% |
5 | 歯科医 | 51,281 | 950 | 39,859 | 77.7% |
6 | 病院、診療所 | 40,862 | 2,396 | 37,721 | 92.3% |
7 | 税理士、公認会計士 | 46,207 | 662 | 32,570 | 70.5% |
8 | 設備工事業 | 125,827 | 269 | 27,401 | 21.8% |
9 | 総合工事業 | 145,360 | 232 | 24,335 | 16.7% |
10 | 弁護士 | 30,354 | 968 | 20,019 | 66.0% |
なんと農業が第1位になりました。
農業は従事している人の母数が多いとはいえ、その多くは兼業や小規模農家。実際に平均所得は139万円と高くはないのですが、それでも2割以上に相当する13万人が年間400万円以上の所得を得ています。
2位の「その他の事業」は残念ながら詳細不明です。
3位の「職別工事業」は、工事現場で下請けとして、解体工事、防水工事、屋根工事、シャッター取り付けなど、工事の一部を担当する事業者のことです。
4位の「その他の対事業サービス業」は、メーリングサービス業、サンプル配布業、ポスティング業、新聞切抜業、集金業、取立業、レッカー車業、速記、データ入力、テープ起しを行う事業、複写サービスなどとなっています。
8位の「設備工事業」は電気工事、空調設備、給排水・衛生設備、エレベーター設備など、機械装置の工事を請け負う事業者。
9位の「総合工事業」は土木施設、建築などの工事を直接請け負う事業者のことです。
女性向けの自営業の業種
女性向きの職種といえば、美容院やネイルサロン、エステティックサロンといった美容系がすぐに浮かびます。
独立開業できる職種としても人気ですよね。
その他にはインストラクター(コンピュータ、語学、塾)などの教育系、洋服や小物販売などファッション系、ウェブデザイン、編集、ライターなどクリエイティブ系も女性向きの職種といえそうです。
では、そうした職種の平均所得と400万円以上の所得割合はどうなっているでしょうか?
事業所得 | 所得申告者総数 | 平均所得(万円) | 400万円以上の所得者数 | 所得400万円以上の割合 | |
1 | 文筆、作曲、美術家 | 99,093 | 215 | 14,606 | 14.7% |
2 | その他の対個人サービス業 | 56,445 | 129 | 4,389 | 7.8% |
3 | 洗濯、理容、美容、浴場業 | 239,239 | 112 | 10,220 | 4.3% |
4 | 教育、学習支援 | 133,802 | 101 | 7,664 | 5.7% |
5 | 繊維、衣服、 身まわり品小売業 | 32,380 | 87 | 1,761 | 5.4% |
「文筆、作曲、美術家」には職業作家だけでなく、ライターも含まれていると思われます。
「対個人サービス」には教養・技能教授業(書道、茶道、華道、楽器、フラワーアレンンジメントなど)が含まれています。
ネイルサロンは、日本標準産業分類では独立した項目ですが、ここでは「理容、美容」に含まれているようです。
こうしてみると、資格が必要な専門職や体力の必要なガテン系に比べると、所得は総じて低い印象です。
夫婦向き自営業の業種
夫婦向きの自営業というと、コンビニエンスストア、飲食店、弁当屋、小売店、販売代理店、掃除代行などが浮かびます。
大手チェーンのフランチャイズが、「夫婦で稼ぎませんか」などという広告を出しているのをよく目にしますね。夫婦で自営業を営んだ方が、万一のときのリスクが軽減されるからでしょう。
事業所得 | 所得申告者総数 | 平均所得(万円) | 400万円以上の所得者数 | 所得400万円以上の割合 | |
保険代理業 | 24,633 | 175 | 4,340 | 17.6% | |
雑貨類、日用具類小売業 | 70,371 | 151 | 8,400 | 11.9% | |
機械器具小売業 | 44,903 | 143 | 4,149 | 9.2% | |
食料品製造小売業 | 28,266 | 133 | 2,407 | 8.5% | |
その他の小売業 | 67,183 | 126 | 7,629 | 11.4% | |
飲食料品小売業 | 99,387 | 124 | 9,561 | 9.6% | |
料理飲食業 | 304,598 | 106 | 17,088 | 5.6% |
保険の代理業の所得が高いのが目に止まります。
また、雑貨類、日用品の小売は、衣類や小物よりも所得が高いようです。
「食料品製造小売業」は弁当屋、お惣菜店、宅配ピザなどが該当します。
「機械器具小売業」はいわゆる街の電気屋さん、ガス器具販売、浄水器販売などになります。
「その他の小売業」は家具、畳、じゅうたん、金物・瀬戸物・ガラス製品などの販売、薬局、ドラッグストアなどが該当します。
「飲食料品小売業」にはコンビニが含まれます。コンビニエンスストアのオーナーの平均年収は、500〜700万円との報告もありますので、この統計とはやや実感にズレがあります。
意外と稼いでいる業種
これまで紹介してきた職種以外で、比較的所得が多く、特別な資格が不要なものを紹介しましょう。
事業所得 | 所得申告者総数 | 平均所得(万円) | 400万円以上の所得者数 | 所得400万円以上の割合 | |
1 | 不動産専門サービス | 15,442 | 317 | 5,665 | 36.7% |
2 | その他の修理業 | 32,184 | 203 | 4,806 | 14.9% |
3 | 道路運送業 | 118,445 | 165 | 9,561 | 8.1% |
「不動産専門サービス」は、アパート・マンション経営、貸駐車場経営、土地・店舗貸し、貸倉庫業(トランクルーム含む)などが該当します。立地の良いところに土地がある人、あるいは不動産を購入できる資金のある人には、向いているかもしれません。
「その他の修理業」は家具、自転車、靴などの修理業です。自転車のパンク修理は、それほど専門的な知識は必要ありません。また靴修理は駅の構内でもよく見かけるフランチャイズもありますので、同じく入りやすい職種と考えられます。
「道路運送業」は個人タクシー、宅配便や荷物の配送サービスをする軽貨物輸送が含まれます。こちらも普通免許があれば参入しやすく、小口配送の大手チェーンで個人事業主として働くことも難しくなさそうです。
ほかにも儲かる自営業の種類
ここで上がった業種のほかにも稼げる自営業の種類はたくさんあります。
自営業のさまざまな職種について詳しくは、
→「自営業の種類一覧|脱サラも可!あなたの知らない世界がきっとある!」
稼げる職種…から独立開業を選ぶのもアリ
こうして見ると、やはり医師や弁護士など高度な資格が必要な専門職は所得が高いことがわかります。
工事関係など、体力の必要な職種も比較的高い所得があります。
飲食店や衣類の小売は競争も激しく、たくさん稼ぐには、それなりの努力が必要なようです。
今回の記事はあくまでも国税庁の統計から見た傾向ですので、統計データで所得が少ない職種でも、高いスキルや豊富な経験、十分な準備があれば、成功することは不可能ではないでしょう。
サラリーマンやOLであれば、上司からのプレッシャー、取引先からのクレームなど、会社勤めはストレスがつきもの。自営業なら自分の裁量で仕事ができるのに、と憧れる人もいるでしょう。
自営業のメリットとしては
- 人に使われず、自分の裁量で仕事ができる
- やりたい仕事を追求できる
- 定年がない
反面、デメリットには、
- 集客から事務作業、実務、資金管理、納税手続など全て自分でやる必要がある
- 雇用保険や労災、厚生年金保険に入れない
- 不安定
など、自由裁量の多い分、自己管理が重要になります。
また、多額の収入を得られる場合もありますが、季節あるいは年度によっても差が激しく収入が不安定になることが多いです。
そして、定年を気にせず働けますが、雇用保険などのセーフティネットから外れてしまいます。病気やケガで仕事ができなくなると、たちまち生活に影響が出ます。
自営業へ転身するときには、こうしたメリットとデメリットを十分理解した上で、検討することが重要です。
自分のスキルや趣味・興味を生かせる職を選び、資金・開業計画、宣伝計画など、事前の準備をしっかり整えてからチャレンジしてくださいね。
また、万一失敗したとき、病気やケガで仕事ができないリスクなども考え、資金に余裕をもたせるなど、リカバリープランも立てておきましょう。
脱サラで成功しやすい仕事は?
→「脱サラで成功しやすい仕事の特徴7 独立リスクの低い~中~高い仕事!」
一人で開業したい人は、
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あなたが自営業者として成功しますように!