「諭旨退職にする」と言われた時の対処方法

諭旨退職 対処法 退職手続き

諭旨退職」と会社にいわれたら、どうすればいいのか?

諭旨退職は懲戒解雇よりは軽いのですが、会社を辞めさせられることには違いありません。

諭旨退職の実情と、「処分を受けた場合の対処法」について解説します。


「諭旨退職」とは何か?

「諭旨」には、以下のような意味があります。

    「目上の者が目下の者に言い聞かせること」
    「趣旨や理由を諭すこと」

何となく、悪いことをして会社を辞めざるを得なくなったというイメージは伝わると思います。

    諭旨退職とは、懲戒処分の中でも懲戒解雇より一段軽い処分です。

懲戒処分に相当する理由があるときに、自主的な退職を促す制度といえます。

会社が温情で自主退職を認めるものなので、期限内に退職届が提出されなければ一般的には懲戒解雇処分となります。

諭旨退職は、厚生労働省のモデル就業規則(以下、「モデル就業規則」)の「懲戒の種類」の中には、規定されていません。

そのため、あなたの勤め先の就業規則では規定されていない場合もありますが、会社を辞めざるを得ないという点では懲戒解雇と変わりません。

しかし、あくまで当人の自主的な退職という体裁をとるため、形式上は懲戒処分に該当しないとみなすケースが多いと考えられます。

このため就業規則上の定めのない企業であれば、退職金は規定どおり満額支給されます。

また、転職時に過去に受けた賞罰として申告する必要もありません(形式上、諭旨退職の事実を伝達しなくても虚偽申告になりません)。

一方で就業規則上の規定がある場合は、退職金の不支給・減給などを伴うケースが多く、懲戒処分の一類型として捉えられます。

いずれにせよ、企業や個別事案による多様性が大きい制度と言えます。

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諭旨退職になってしまうよくある理由

1.横領・着服・横流し

横領・着服・物品の横流しなど刑法上の窃盗などに該当する行為があれば、懲戒処分は免れないでしょう。

しかし実は、横領や着服をまったくしたことがない人もほとんどいないのです。

それは私用電話スマホの充電も、厳密には電話代や電気料金の窃取に当たるからです。

そのため懲戒処分の適用には、横領等の内容や金額が大きく影響します。

数百円の備品を持ち帰った程度で諭旨退職になることは通常考えられません。

2.セクハラ・パワハラ

セクハラやパワハラ懲戒処分の対象になります。

これも内容や頻度により適用される処分は異なりますが、音声、画像、文書などの証拠物件が揃っていれば重大な処分は免れません。

幹部社員の場合は稀に会社が加害者の肩を持つこともあります。

しかし、証拠を出されれば裁判でも勝ち目はないため、傷を小さくするように対処することが無難です。

3.機密情報の漏洩

とくに会社の製品やサービスの競争力の源泉となる機密情報を漏洩すれば、懲戒処分を避けられません。

最悪の場合は、不正競争防止法違反で有罪になります。

ただし、会社内部の情報を一切外部に漏らしたことがない人というのもほぼいないはずであり、懲戒処分を下す際にはその内容や頻度が考慮されます。

4.危険運転・飲酒運転

一般的に危険運転や飲酒運転により刑事罰を適用されれば、執行猶予付きの判決であっても重い懲戒処分を受けます。

また仕事でクルマを運転する機会の多い企業や職種の場合は、行政処分で済む程度の飲酒運転でも解雇されることがあります。

5.長期欠勤・休職

モデル就業規則には、

    「業務上の負傷又は疾病による療養の開始後3年を経過しても当該負傷又は疾病が治らない場合であって、労働者が傷病補償年金を受けているとき又は受けることとなったとき」

    「精神又は身体の障害により業務に耐えられないとき」

が解雇事由の1つとして掲げられています。

こうした場合にも諭旨退職を勧められることがあります。

6.業務上の事件・事故による引責

業務上の重大な事件・事故を引き起こせば、懲戒処分の対象になります。

人命にかかわる事故であれば、業務上過失傷害・致死などにより刑事罰を科される恐れもあります。

管理職の場合は、自分が当事者でなくても監督責任を問われる可能性があります。

7.成績不振による引責

モデル就業規則には、

    「勤務状況が著しく不良で、改善の見込みがなく、労働者としての職責を果たし得ないとき」

が解雇事由の1つとして掲げられています。

極端に仕事ができない人や指示に従い改善を試みない人の解雇は、これに該当します。

とはいえ懲戒解雇は企業にとってもリスクが大きいため、少しだけ軽い諭旨退職を求められることになります。

8.アルバイト・副業

ほとんどの企業は就業規則で、専業義務(アルバイト・副業の禁止)を定めています。

これも程度問題ですが、遅刻や無断欠勤が頻発するなど社業への悪影響がみられる場合は解雇処分に相当すると判断される可能性があります。

9.マルチ商法

マルチ商法(ネットワークビジネス)の勧誘を職場で行った場合も、なんらかの懲戒処分という判断になる場合があります。

10.政治・宗教活動

一般的に、職場で政治的・宗教的な活動をすることも就業規則で禁止しています。

実際には経営者や労働組合を通じ何らかの政治活動(選挙運動)を行っている企業は少なくありませんが、目に余る行動があれば懲戒処分の対象になります。

11.経歴詐称

モデル就業規則には、

    「重要な経歴を詐称して雇用されたとき」

が懲戒解雇事由の筆頭に掲げられています。

研究職で学位や表章実績を詐称するなど、採用の決め手となる重要な経歴にウソがあれば、解雇処分になる可能性は高いでしょう。

12.その他の犯罪行為

ストーカー行為や痴漢などの性犯罪で逮捕されれば、懲戒処分になる可能性が十分にあります。

ただし痴漢(都道府県の迷惑防止条例違反)の場合は、会社にバレることなく釈放されるケースが多いほか、冤罪の可能性も十分に考えられるため、初犯で重大な懲戒処分を適用されることはあまりないと言えます。

諭旨退職を勧告されたら何をすべきか

諭旨退職 勧告されたら

1.就業規則の確認

まず、就業規則を確認することが重要です。

懲戒処分の一類型自主退職を促すものかにより、大きな違いがあります。

自らに非があることを認めざるを得ないのであれば、可能な限り懲戒処分を受けずに退職できるように努力することが大切です。

2.勧告理由の妥当性を検討

過度に厳しくないか

諭旨退職の原因となる非が明確な状況であっても、退職する程の重大な問題ではない可能性もあります。

会社が世間の評判を気にするなどして、極端に厳しい処分へ振れるケースも少なくありません。

社内外の事例と比較して過度に重い処分を科そうとしていると判断できる場合は、諭旨退職に応じないことも考えましょう。

会社の事情を押し付けられていないか

経営状態の悪化
現行の労働法令や慣行の下では、倒産しない限り指名解雇を行うことは困難です。

このため些細な問題を採り上げて自主退職へ追い込む目的で、諭旨退職を勧める会社もあります。

セクハラ・パワハラ被害の隠蔽
セクハラやパワハラの加害者が社長などの実力者の場合は内部告発の隠蔽と同じ論理が働き、本来であれば保護されるべき被害者が諭旨退職を強要されることもあります。

組織的なイジメ
中小企業や大企業の営業所など少人数の職場では、組織的なイジメの最終的な手段として諭旨退職が使われることもあります。

こうした場合、本人にまったく問題がなくても精神的に追い詰められて退職届を提出してしまう可能性があります。

内部告発の隠蔽
ヒドイ会社になると内部告発を隠蔽するために、当事者を諭旨退職に追い込もうとします。

不正・誤りのないことを前提とする大企業や官公庁でもこうしたことが起こり得るので注意が必要です。

事件・事故責任の押しつけ
対外的に重大な影響を及ぼす事故・事件の責任を押しつけられて諭旨退職を迫られるケースもあります。

出世競争が激しい内向きの組織では、こうした事例がしばしば発生しています。

3.対抗手段の検討

(1)労働組合への相談

諭旨退職を求められた理由や企業の体質にもよりますが、明らかに不当な処分と言える状況であれば労働組合に相談することも検討に値します。

ただし諭旨退職は最終的に人事部の判断で勧めているはずなので、労使協調路線の組合が真剣に取り合ってくれない可能性は大いにあります。

(2)労働基準監督署への相談

やはり一番頼りになる存在は労働基準監督署です。

問題行為の捏造や論点のすり替え、些細な就業規則違反に対する過大な懲戒処分などを明快に説明できれば相談に乗ってくれるだけでなく、行政権を行使して会社に対し処分の撤回を求めてくれるかもしれません。

(3)訴訟の提起

退職を受け入れざるを得ない理由は全く存在せず会社の横暴により諭旨退職を強要されていると断言できるもののラチが明かない(あるいは懲戒解雇されてしまった)という場合は、民事訴訟で白黒をはっきりさせるしかないでしょう。


「諭旨退職」が妥当かどうか判断して対抗処置を

諭旨退職  妥当か判断

諭旨退職には、企業の思惑やリスクも絡んでいる場合があります。

  • 社会的な評判を気にして懲戒解雇を避けたい(懲戒解雇ではないので不祥事の公表は不要と言いたい)
  • 戦略的に人員整理を進めたいが懲戒解雇に値する理由が見当たらない

など、企業側に何らかの弱みがある場合もあるでしょう。

そのため、社員が自主的に会社を辞める諭旨退職を持ち掛けてくるのです。

諭旨退職の話が出たら企業のホンネを想像した上で、自らの損得勘定を計算し受け入れるか拒否するかを判断しましょう。

 
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あなたが諭旨退職を乗り越え、いい仕事に就けますように。